過払から未払へ

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今週号の税務通信を見ていると、未払残業代の記事が!

厚生労働省が8月10日に公表した『監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年度)』によると、労働基準監督署の指導により、平成29年度中に未払残業代を支給した会社は1,870社で、その総額は446億円(前年度より319億円増)とのこと。いずれも過去10年で最多です。最近では、過払金返還請求がひと段落した弁護士業界で、この未払残業代請求がビジネスとして盛んになっているようです。

そういえば、過払金返還請求が盛り上がりかけていたころ、ビジネス雑誌において「過払金の次は未払残業代だ」との記事がありましたが、まさにそのようになってきましたね。さて次は何がくるかな、、、。

源泉徴収することを忘れずに!

それはさておき、未払残業代が支払われる場合、税金の問題が出てきます。だって給料ですから。

未払残業代の支給方法として①一時金として支払われる場合と、②過去の給料として支払われる場合が考えられます。①の場合はその年の「賞与」として源泉徴収の必要があり、②の場合は年末調整のやり直しを行う必要があります。実務上は、処理が簡便である①の方法をとることが多いようです。

また、その請求が元従業員から直接ではなく、弁護士事務所が間に入り、「解決金」等の名目で弁護士事務所の口座に振り込んでもらうこともあるそうですが、その場合も源泉徴収の必要があります。名目ではなく実質で判断しますからね。

賞与の源泉って、、、

賞与で源泉徴収というと、実務をされたことのある方はあることに気づくかと思います。「前月の社会保険料控除後の金額は?」と。賞与の源泉徴収では、前月の給与をベースに、控除する源泉所得税額を計算します。ただし請求者が元従業員である場合は、前月の給与が存在しないことが一般的です。そのときは、所得税法186条の規定により下記の通り計算します。

(1)(賞与の支給額-社会保険料等)÷6(*)

(2)(1)の金額を給与所得の源泉徴収税額表(月額表)の乙欄に当てはめる

(3)(2)で求めた税額(*)

*賞与の計算の基礎となった期間が6月を超える場合は、12

乙欄を使用することにも注意が必要です。

一時金を分割払いにする場合は?

資金繰りの都合で、分割払いとなった場合はどうでしょうか?

分割する支給額や支給期が決まっており、例えば1年間定期的に支給されるようなものは、「賞与」ではなく「給与」として源泉徴収する必要があります。この場合にも乙欄を使用します。

未払残業代の時効が2年から5年に!

現在、労働基準法においては、この未払残業代の時効は2年とされております。これは、労働者の賃金請求権の時効を1年と定めている民法の短期消滅時効の規定を、労働者保護の観点から修正するための特則です。

しかし、2020年4月1日に施行予定の民法改正により、短期消滅事項の規定は削除され、消滅時効の期間は債権者が権利を行使できることを知った時から5年とされることとなります。それに合わせる形で、労働基準法も現在の2年から5年へと期間が延びることとなりそうです。

今後、元従業員からの請求があった場合には、間違いなく現在よりも金額は大きくなりますから、サービス残業が多い企業にとっては、頭の痛い悩みとなりそうです。